WD29: にせ十字(NICE JUJE) / ギャラクシーホテル* (46min//2000/5

を。

今回はウッドマンの「にせ十字(NICE JUJE)」名義の『ギャラクシーホテル』。

いまとなってはアンビエントテクノも死語だし、この言葉で音聴きたくなる人も皆無ですが、この『ギャラクシーホテル』はアンビエントテクノの傑作です。

これが出た当時ウッドマンとは後に360から出ることになる『ピジンジャズ』の打ち合わせしていた記憶がありますが、お互いの最近のリリースを交換した時にもらったカセットがこれで、その後ウッドマンに会った時にニセ十字はオーサカマッサージ(ウッドマンの別名義)やマカロニ(マカロニマン名義)とはずいぶん違う、おれこれ好きだわ、と伝えるとベローチェでいつもはおしゃべり魔女が止まらないウッドマンは遠い目をして彼方をみやりました。といってもそこにはカフェベローチェの壁があるだけでしたが。心アラスカ。そして後にウッドマンからはこの『ギャラクシーホテル』そっくりの生暖かい寒い芯だけ静かにあたたかい遠赤外線テクノな曲は、ククナッケも参加したジゲンのリミックス盤の『エピローグinチャイナ
』で何曲も届けられました。今にして思えばこの『エピローグinチャイナ』は、同じくククナッケも参加したカセットの『Polar Rave』のネガともいえる内容。

『ギャラクシーホテル』に近い音はといえば直ぐに思い出すのはテーリテムリッツの最初期のコマトンスのアナログ盤で、長くアンビエントテクノのクラシックでしたが、ニセ十字とかなり生暖かい寒さで共通するところひじょうに大きく未聴であればぜひアナログで好きな回転数で。また女性アンビエント作家チアニの描く氷原とも近いですね。チアニの場合は海原の揺れる速度はもっと早く治癒音色の熟練度がすごいです。音のトリートメントが進むと一曲二十分ばかりのプリンストーマスや北欧テクノにも近く。『ヨヨギパーク』のローレンスやイタロのマロンソを彷彿させるところもあります。がウッドマンのニセ十字の場合はもっと介抱感が強いです。間違いやすいですが、開放感でなく介抱感です。
男で生まれながらこんな介抱感あるビートを作るの他にはラリーハードかテーリテムリッツくらいでしょうか。いや世界にはもっといるはずです。しかしPCデノミ製作が当たり前になるとどうしてもハイパーになりすぎてしまって介抱感は薄れることに。いまは介抱されるよりは撹乱でのみ麻痺したい何千回目かの周期でしょうか。
この『ギャラクシーホテル』一曲が長過ぎてウッドマンコンピを編もうにもどこで切ることもできずにいたら今回めでたくCDR再発になりました。
この『ギャラクシーホテル』聴き直す度に離島在住時代数回行った日本最南端のプラネタリウムを思い出します。このプラネタリウム、当時はだじゃれのきつさも有名で、客が自分ひとりでも館主が星案内とともに繰り出してくるだじゃれはウッドマンのだじゃれとどっちがきつかったときかれれば答えられませんが、『ギャラクシーホテル』後半ではあきらかにオーロラ出現の音響もあります。ずっと聴いてるとくっだらないことで悩んでる自分や他のヒューマンの殻が上空に浮かんでいます。